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映画「存在のない子供たち」は実話?原作・元ネタやその後について

映画「存在のない子供たち」は、15分ものスタンディングオベーションを巻き起こしたリアルな映画ですが、今回は、映画の内容は実話で元ネタや原作があるのかについてと、実在した少年が映画で演じていることや、レバノン出身の監督の意図などについて深ぼりしてみました。

映画「存在のない子供たち」の実話・原作・元ネタについて

映画「存在のない子供たち」は、映画の舞台となったレバノンで実際に起こっていることを表現した映画です。

映画は、実話ではありませんが、限りなく実話に近い状態で製作されています。

映画「存在のない子供たち」は、レバノン出身の監督によって、レバノンのストリートチルドレンの1人が、実際の生活の様子を演出した映画なのです。

映画「存在のない子供たち」の監督

映画「存在のない子供たち」の監督にあたったのは、ナディーン・ラバキーという女性監督です。

ナディーン・ラバキー監督は、1974年にレバノンで生まれ育ち、映画の舞台となったベイルートのサン・ジョセフ大学というメディア専攻の大学を卒業しています。

俳優としてレバノン映画「BOSTA」に出演したこともありますが、2007年の「キャラメル」という映画で監督と主演を務め、世界の注目を浴びる女性となります。

 

レバノンをよく知るナディーン・ラバキー監督は、レバノンに住む人々の4分の1がシリアからの難民であるという現状を、「日常的な現実問題だ」と主張しています。

そして、映画「存在のない子供たち」を制作しようと思ったきっかけは、「ストリートチルドレンが感じていることを理解したかったから」だと言っています。

 

レバノンには、シリアからの難民とレバノンの人の間に生まれた、たくさんの子供たちが存在しています。

しかし、その子供たちは社会的に存在を認められることがほとんどなく、ストリートチルドレンになっていると言われています。

ストリートチルドレンは、社会的に存在を申請されることがほとんどないので、社会には存在していないことになっているのです。

 

社会に存在を認められるIDを発行されない子供たちを、社会は把握できません。

そして、ナディーン・ラバキー監督は、社会に存在を認められていない子供たちは、何を考え、何を感じているのかを知りたかったと語っています。

映画「存在のない子供たち」の主人公選考

映画「存在のない子供たち」の主人公は、映画の舞台となったベイルートのストリートチルドレンの中から選ばれました。

ストリートチルドレンの多くは、社会的書類に存在が記録されていません。

レバノンと、シリア難民の間に生まれた子たちは、社会では存在していないことになっているのです。

 

ストリートチルドレンの人生は、貧困と社会的無視の中での過酷な生き残りの挑戦です。

生きることが簡単ではない状態にあっても、社会に認知されていないので、助けを得ることができないのです。

 

映画の主人公に選ばれた少年ザインは、ストリートチルドレンの1人でした。

レバノン映画監督のナディーン・ラバキーは、ベイルートのストリートでザインを見つけ、自身の映画「存在のない子供たち」の主役に抜擢したのでした。

 

ザインの家族は、シリアからレバノンに2012年に移住してきました。

レバノンの首都であるベイルートに身を置くと、ザインは貧困の為に学校にも通えず、薬物と暴力に遭遇することになります。

 

そんな過酷な状況の中で、ザインは、同じベイルートのストリートチルドレンたちを助けていたと言われています。

 

映画「存在のない子供たち」は、レバノンのベイルートの実態を知る監督が、「国連難民高等弁務官事務所」のサポートを受けて、ベイルートのストリートチルドレンの1人を主役にして制作された映画だったのです。

映画「存在のない子供たち」の撮影

映画「存在のない子供たち」は、通常の映画撮影の真逆の方法で撮影されました。

通常、映画というものは、脚本があってセリフが決められており、カメラの位置が決まっていて、俳優たちがそれを意識しながら演じます。

 

しかし、映画「存在のない子供たち」は、日常的な生活の様子をザインが演じるのを、そのままに撮影したそうです。

ザインには、セリフを覚えることが不可能だったとナディーン・ラバキー監督は言います。

その為、驚くことに、ザインは自分の中から出てくる言葉を発し、普段の自分がするように行動しているところを、ナディーン・ラバキー監督は撮影したと言うのです。

 

そして、撮影できたものを、編集して映画に仕上げたのだそうです。

ナディーン・ラバキー監督は、登場人物たちに「演じる」ことを指示せずに、普段通りの自分を表現することを指示したそうです。

 

しかし、このように実際のレバノンで起こっていることを忠実に再現しようとしたナディーン・ラバキー監督でしたが、「実際は映画よりももっと酷いもので、私は性的虐待や、体罰的虐待のありのままを映画に撮ることはできなかった」とニューヨークタイムズで語っています。

映画「存在のない子供たち」のザインとその家族のその後(現在)

ザインとその家族は、現在ノルウェーの「海が見える二階建ての家」で暮らしているそうです。

ナディーン・ラバキー監督は、「新しい環境(国)へ引っ越して、今までとは全く異なる生活をするということは、ザインにとって新しい人生の始まりだ」と言っています。

さらに、ナディーン・ラバキー監督は、「もしもザインがレバノンにストリートチルドレンとして残っていたら、彼が事件などに巻き込まれた可能性が高いだろう」と推測していました。

 

その為、ナディーン・ラバキー監督は、ザインとその家族を助け、ザイン一家は、2018年の8月にノルウェーに移住しました。

ザインは今年2019年に15歳となります。

ニューヨークの映画イベントでは、「朝早起きして兄弟たちを起こし、8時からの学校に間に合うようにバスに乗るのが僕の日課です」と答えていたそうです。

 

レバノンにいた頃のザインは、教育というものを受ける機会がありませんでしたが、今は学校に通い、読み書きができるようになったと言われています。

ザインは、今まで眠ったことがないベッドで眠ったり、森でトナカイと触れ合うことも新しく経験したようです。

 

まとめ

ザインの映画出演は、ノルウェーへの移住という新しい人生のきっかけとなった出来事で、ノルウェーへの移住は、彼と家族の人生を変えるものとなりました。

しかし、ザインのような境遇に立たされている子供は、あと何人くらいいるのでしょうか?

ザインのように他の国へ移住できるのは、難民の1%ほどに与えられるチャンスだと言われています。

 

私たちが知ることができないストリートチルドレンの境遇や実態を映画で目の当たりにし、心が痛みますが、これが現実の世界で起こっていることだということに、何とも表現しがたい感情が沸き起こります。

また、その一方で、心優しい少年ザインのたくましい姿に勇気づけられるのでもあるのでした。

 

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